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2013年7月30日 (火)

No.90:「風立ちぬ」を見て来ました

001_2 7月20日から上映された「風立ちぬ」は、かなりの話題を呼んでいるようです。新聞・雑誌などでも、多くの識者がコメントを寄せています。さらに主人公が零戦の設計者・堀越二郎という事で、いわゆる航空マニアの人々も関心を寄せています。

小生も実は航空マニアの末席に属する人種であり、且つ零戦が活躍した時期には15歳前後でしたから、実際の飛行を見る機会は有りました。また、その活躍を報じるニュース記事を読み胸を躍らせた経験も持ちます。

そんなわけですから、日頃は映画にもアニメにも縁遠いのですが、「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」というコピーに釣られて映画館に赴きました。

002d 映画では実在した堀越二郎が飛行に憧れた少年時代から終戦までを描き、その恋人には堀辰雄の作品に登場する美少女・菜穂子を配しています。むろん菜穂子は創作された人物で実在していません。

堀越二郎は片時も計算尺を手放さぬ仕事の鬼ともいうべき技術者ですが、関東大震災を契機として、病弱の美少女・菜穂子と知り合い、幾多の紆余曲折を経て結婚に至ります。堀越は東大で航空工学を修め、三菱内燃機 (今の三菱重工) に勤務、軍用機の設計に関わります。

01_1928_2 堀越が最初に手掛けたのは隼型戦闘機(後年の中島飛行機製の一式戦闘機"隼"とは違います)の一部分でしたが、この機は試験飛行で墜落大破して失敗に終わりました。
次いでドイツ・ユンカース社に技術導入のために派遣されますが、ここでは彼我の技術格差を痛感させられました。

02_7_2 米国を経由して帰国後に、海軍の7試艦上戦闘機の設計主任に抜擢され、身魂を傾けて設計に没頭しますが、失敗作に終わりました。この機は低翼単葉・全金属製という当時としては先端の技術を採り入れたのですが、未消化の部分も有り、成功作には至りませんでした。

それから2年を経て、9試艦上戦闘機の設計主任を命じられました。今度は前回の失敗を教訓とし、さらに改良を行い、期待以上の高性能を示しました。例えば最高速度は450kmを越しました。これは複葉形式の前制式機が350kmほどであったのに比して格段の進歩でした。

03_9形状も前の7試艦上戦闘機 に比して洗練されました。著しい特徴は主翼の上反角の付け方です、逆ガル・タイプと云い、胴体から下向きに出て、降着装置の処で反転しています。脚を短くする技法として考えられたようです。
この機は運動性能も良く、試験飛行に立ち会った海軍の将校は激賞しました。映画では、この機の完成で一区切りになっています。また、堀越がこの機の設計に専念している時期に持病の肺結核が悪化した菜穂子は、夫の負担を軽くする為に、自らの意思で高原の療養所に移ると云う見せ場が有ります。( もちろん、フィクションですが)

04_96 映画には登場しませんが、この9試艦上戦闘機をブラッシュ・アップして制式化されたのが96式艦上戦闘機です。その機体になって逆ガル・タイプの上反角は目立たなくなりました。
また、9試艦上戦闘機の仕様設定に際して並み居る海軍将校がそれぞれ勝手な要求を出して設計側が困惑するシーンが有ります。このような事態は現在でも余り変わってはいないようですが。三菱社内での設計検討のシーンでは、"沈頭鋲","ジュラルミン","引込み脚","翼面荷重","NACA翼断面形"などの専門用語が飛び出します。航空オタクには興味津々ですが、多くの方には全く判らないでしょう。

05a 05b
映画では期待した零戦は、最後に編隊飛行が見られるだけで、それも「一機も還らなかった」という呟きで終わりでした。航空オタクが望んだであろう零戦の設計に纏わる秘話的な場面も、実戦における活躍も一切有りませんでした。

ある人の解説によれば、「美しい飛行機を創りたかった」という堀越の夢を実現しようとする意思を宮崎監督は表現したのだそうです。また、ある人は架空の菜穂子を配した純愛物語で、「大人の御伽噺」であるとも評しているようです。
さらに、関東大震災・昭和恐慌の中で軍備強化に向う世相を活写していると説く方もいます。

老生は旧航空オタクとしての興味から、映画館に行きましたが、予期した内容とは違っていても、充分に見応えのある作品だと感じました。特に堀越の技術者としての意欲・執念・研鑽、人間としての誠実さには改めて感動しました。

また、堀越の職場の雰囲気・人間関係などのシーンも、技術者の末席に連なった経験のある老生にとっては、往時を彷彿とさせるものが有りました。(老生の専門は情報通信の分野で航空では有りませんが)
                                <以上>

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