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2013年8月25日 (日)

No.92:「堀越二郎の生涯」航空発祥記念館の見学 (1)

映画「風立ちぬ」の評判は高く、今や零戦の設計者・堀越二郎の名は航空機にも戦争にも無関心の人々の間にも広まっているようです。中には、ずいぶん見等外れの論評や感想もあるようですが、とにかく卓越した開発技術者の業績と人生が多くの人々に印象づけられるのは良い事だと老生は考えます。

201s 閑話休題。映画の公開と呼応してか、所沢市・航空発祥記念館では特別展として「堀越二郎の生涯」を開催している事を知り、猛暑の最中ですが見学に赴きました。

会場には、現在でも飛行可能の零戦が展示され、多数の人々が見入っていました。実は零戦の展示は、老生の知る限りでは国内に数箇所ほど在るのですが、飛行可能というのは世界にこの1機しかないそうです。ここに展示されているのが、それです。ただし、米人の所有であって、このイベントのために借り出したものだそうです。

しかしながら、むしろ老生の興味は堀越家から提供された、技術資料に有りました。70年も前の書類ですから、紙は変色し、和文タイプライターで印字された文字も不鮮明です。また、敗戦直後に軍部からの命令で軍事に関わる資料は一切焼却処分された筈ですから、その一部でも残っていたとは驚きでした。

160bs_5 左図は「十二試艦上戦闘機計画要求書」の表紙の一部です。本文は5頁ほどのタイプ印刷した書類です。内容は①目的 ②形式 ③主要寸法 ④装備発動機 ⑤性能  ⑥兵装及び艤装 ⑦装備計器 ⑧強度 ⑨その他の要求、という構成です。

この要求は、当時の世界水準を遥かに上回る高度のものでした。特に高速で長大な航続力を持ち、しかも強力な20mm機銃を装備するというのは無理難題でした。しかも、国産のエンジンは欧米の最先端に比し、1~2年のギャップが在るというハンディキャップが有りました。

正に多重苦というべきですが、堀越技師は天才的な発想と粘りにより、最適解を生み出したのです。

この書類を見て、老生なりに気が付いた事項が有ります。それは空戦性能に就いての要求が明示されていない事です。零戦に卓越した特徴として巴戦に強い事ですが、この計画書には記載が有りません。もっとも、この要求は単なる数値では表せないので、口頭による要求をしたのではないか、と忖度できます。

150bs_5 次に、無線帰投装置に付いての記載が有りません。零戦の長距離性能を発揮するために、基地への帰投(帰還)を支えるシステムが必要でした。この記載が無いのは、当初は必要性を予測しなかったのかも知れません。

また、意外と感じたのは、浮泛装置と消火装置の要求が示されていた事です。その実態については判りませんが、ある程度の安全対策は考慮していたと感じ取れます。

左図は「十二試艦上戦闘機計画要求書案議事摘録」です。上記の「計画要求書」について、官民の打合せが行われた時の議事録と云うべき書類のようです。どちらも日付が入っていませんが、1937年である事は確かでしょう。
この書類に依って「計画要求書」に示された性能の数値を巡って、細かい検討がなされたのを伺い知ることができます。
特に最高速度は出来るだけ早く、着艦速度については出来るだけ低く、と要望が有って甲論乙駁のやり取りが有ったと察知されます。また、「要求計画書」には明記されていなかった「クルーシー式無線帰投装置」が話題になったようです。
どちらの書類も軍極秘のモノで、極めて貴重な資料と思われます。

これらの要求に応えるべく、堀越技師のチームが知力を振り絞った話は広く伝えられています。その一例として、堀越技師の設計ノートの一部が展示されていました。

70bs 左図はその一例ですが小型のノートに細かい数値が並んでいます。条件をいろいろと変えて最適解を模索したのでしょう。コンピューターの無い時代ですから、すべては手作業でした。下図も同様のノートの一部です。

165s 166s_2 
         <以下次号>                     

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