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2013年10月30日 (水)

No.97:雲形定規にまつわる昔話

身辺の整理をしていましたら、古い雲形定規が見付かりました。今の研究者・技術者の諸氏は、恐らくは見た事も無く況してや使った経験などは皆無と思われます。しかし、僅か60年以前には理工系の者にとっては、身近な存在でした。

下図がそれですが、何に使ったのか? 曲線を描くためです。理工系の分野では曲線を含む図面を作成するのは重要な仕事でした。

Rlc_2
老生は現役時代に電子機器の設計開発を担当していましたが、この分野では、電気回路の周波数特性を計算する事が重要な仕事でした。
周波数を順次に変化させた回路がどのような応答をするか、或いは所要の応答を得るためには回路をどのように構成するか、と云うのが重要な研究課題でした。

次図は、その一例です。「水晶振動子」というのは、情報通信機器の主要な部品ですが、その特性を計算した結果をグラフに表示したものです。

その周波数特性を計算するには、先ず一般特性を示す理論計算式を求め、その上で具体的な数値を入れて計算します。少しづつ条件を変えて算出した結果を図示すれば、通常は連続した曲線になります。これが特性曲線と云われるもので、機器を設計する際の重要な資料です。

ここで、連続した曲線と云いましたが、計算そのものは。ある間隔を空けて行いますから、その結果は飛び飛びの点に過ぎません。
グラフ用紙の横軸に入力(条件)数(点)を記入し、縦軸に出力(応答)数(点)を記入し、それらの点を曲線で繋いで連続した曲線が得られるわけです。ここに雲形定規が活躍する場が生じます。

図上で近接した3点を採り、雲形定規を当てて最も近接した部分を見つけます。そうして始めの2点を結んだ曲線を描きます。これを繰り返して曲線を完成させるのですが、常に前工程の点を重複させて3点を採るのがコツです。これを怠ると滑らかな連続した曲線になりません。

このようなグラフの作成の作業は前段階の数値計算を含めて、すべて手作業で行いました。それですから、1本の曲線を得るのに数ケ月を要し、パラメーター(補助変数)を変えて数本の曲線を完成させるには、時には数年もかかる事も珍しくは有りませんでした。

2154s
なお、このような図を描く時には三角定規・T型定規・分度器・製図器(コンパス)・製図板などを総動員しました。これらは今でも使われています。
また、数値計算には計算尺・機械式計算機・算盤・関数表などを駆使しましたが、これらは殆んど姿を消してしまいました。

現在では、数値計算にはコンピュータが有り関数電卓も有ります、特性曲線を描くにはX-Y プロッタが活用でき、文書や表の作成にはパソコンが使えます。それですから、手作業ならば数ヶ月から数年を要した特性曲線を数日で纏められるのではないでしょうか。

念の為に記すと、数値計算の出発点となる理論計算式の導出は千差万別で、比較的容易な場合には数日で、難問となれば一流の研究者が数年を要するケースも有りました。

日本が高度成長を遂げた時期には、研究・開発・設計の現場では、このような器具を駆使して研鑽努力を重ねた日々の連続でした。

                               <以上>

                        
                                

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