無料ブログはココログ

« No.138:「サイン・コサインは女の子に必要か」との知事の妄言に関して | トップページ | No.140:海賊版秘話:忘れ去られる戦中・戦後史の一断面 (1) »

2015年10月27日 (火)

No.139;複同調回路の特性曲線ー旧い資料から

永らく無線通信機の研究開発に関わって来ましたがリタイアして既に30年余、在職時に参照した文献や編纂した設計資料が自室に山積して、家人から整理を迫られ、その殆んどを廃棄しました。
その過程において、一枚の特性曲線が眼に留まりました。それが以下に示す「複同調回路」の特性曲線です。3_3
「複同調回路」とは下図に示すように、コイルとコンデンサを並列接続した同調回路2個を結合して構成します。結合は双方のコイルを近接させた電磁方式に依ります。29_2 

この回路は、無線受信機に不可欠の構成要素で、無数に飛び交う電波の中から必要な電波を選び出す役目を果します。もし、この働きが充分でないと、混信に悩まされます。
簡単な回路のようですが、その特性は直感的な予想を超えるものがあり、古典的な電子回路の世界では重要な研究テーマでした。多くの研究の中で、米国のAiken の研究と独国のFeldkeller の研究が抜きんでていたようです。今から約80年も前の事です。
この回路が多用されるのは、スーパー・ヘテロダイン方式の無線受信機です。次図に示す系統図の中の"IFT"がそれです、中間周波トランスとも云い、所要の周波数のみを通過させ、それ以外の周波数を遮断する帯域通過型フィルタです。

40b_2

その周波数ー出力特性を次図に示します。理想的には超高層ビルのような形が望まれるのですが、実際の特性は富士山のような形となります。、この乖離を如何にして埋めるか設計者は苦心します。
39b左図で、横軸は周波数を、縦軸は出力を示します。曲線は数本有りますが、山が一つの単峰形と、二つの双峰形に大別されます。これは一次コイルと二次コイルの結合の粗密に依ります。
粗く云うと、選択度を重視するケースでは疎結合(単峰)を、忠実度を狙う設計では蜜結合(双峰)を採ります。
この回路の理論や特性は、1930年代に既に解明されていたのですが、文献などに示された図は小さく目盛りが粗いので、実際の機器設計には不十分でした。それで、より精細な特性曲線図を作る必要がありました。冒頭に示した図がそれです。
ここに示した特性曲線図は老生が職場で使用するために作成したものです。特性曲線を計算する理論式は既に公知ですから、これに変数・補助変数を入れて計算し、結果を半対数方眼紙に表示するわけです。
この計算には多大の労力と時間を要しました。コンピュータは未だ存在せず、電卓すら有りませんでした。機械式計算機と計算尺と算盤と対数表をフル活用した手作業が数ヶ月以上続きました。特性曲線上の1点を得るのに数分以上を要します。連続した曲線を作るためには数10点以上の計算をを要します。さらに曲線は数本求めますからすから、特性曲線を作図するためには膨大な計算作業を要します。
その計算結果を方眼紙にプロットした後に雲形定規を使って曲線を描いて、やっと図示の特性曲線が完成するわけです。数ヶ月を要したと記憶します。今日ならばコンピュータに計算させ、ブロッターに描かせることが出来ますから、手計算の労力は全く無くなり、時間は激減しました。ただし、理論計算式の導出は現在でも人間サマの受持ちです。
ふと、見つけ出した旧い図面から、往時を回想して小文に纏めました。

                         <以上>



« No.138:「サイン・コサインは女の子に必要か」との知事の妄言に関して | トップページ | No.140:海賊版秘話:忘れ去られる戦中・戦後史の一断面 (1) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/575020/62558356

この記事へのトラックバック一覧です: No.139;複同調回路の特性曲線ー旧い資料から:

« No.138:「サイン・コサインは女の子に必要か」との知事の妄言に関して | トップページ | No.140:海賊版秘話:忘れ去られる戦中・戦後史の一断面 (1) »