無料ブログはココログ

« No.148:「電車」と云う語の誤用・乱用 (1) | トップページ | No.150:法律は常に後追いか? »

2016年5月 4日 (水)

No.149:「電車」という語の誤用・乱用 (2)

蒸気機関車が客車を牽引する形式の車両、すなわち「汽車」の実用化は1825年、英国でした。日本は遅れて1872年に導入・開通しました。この形式の鉄道車両は、以後100年ほど広く使われて来ましたから、「鉄道(車両)」≒「汽車」という刷り込みが定着したのでしょう。
1900年代の初期に、電気機関車が客車を牽引する形式の車両が登場しました。エネルギー効率が高く、トンネルや勾配の多い区間に適していました。しかし、電化設備の投資が大きく、軍部の反対意見(電源系を破壊されると全車両が運行不能に陥る)も有って、1900年代後半までは、大都市近郊の一部路線に限られていました。

61上図は、この形式の一例で寝台特急「エルム」です。この形式の車両 が現れた頃には「汽車」というコトバが通用していたようです。適切なネーミングでは無かったのですが、馴染み深い在来のコトバを流用したのでしょう。また、今では無造作に「電車」と云う方が多いようです。

21_2石炭から石油へのエネルギー転換政策により ディーゼル機関車が客車を牽引する形式の車両が、1900年代後半から大量に登場しました。上図は、その一例で北海道を疾駆する「北斗星」の勇姿です。
さて、この形式の車両を人々は何と云うのでしょうか? 「DL列車」と呼ぶのが適切と思われますが、殆んど使われていないようです。「電車」で間に合わせる人が多いように感じます。

後出しになりますが、ある辞書で「列車」を引くと「鉄道の本線路を運転する車両、または車両の連なり」と記載していました。
ずいぶん範囲を広げた定義で、鉄路を走る車両はすべて該当する事になります。特に1両でも適用されると読取れますが、列車という文字についての
論理矛盾を感じます。
別の辞書では「機関車に付けた一続きの車両」と有り、老生は、こちらの方に賛成したい心情です。この定義には、既述の「汽車(SL列車)」「EL列車」「DL列車」に違和感なく適用できます。

機関車が客車(或いは貨車)を牽引する形式は動力を一箇所に集中する方式です。一方、「電車」は動力を持つ客車と持たぬ客車を混在させますから動力分散の方式です。「気動車」もまた動力分散方式です。
以上を整理すると、多様な鉄道車両は、電化区間と非電化区間、動力集中と動力分散の組合の4通りになります。
電化区間には「EL列車」と「電車」が運行し、非電化区間には「SL列車」「DL列車」と「気動車」が走ります。

このように分類整理すると、スッキリすると老生は愚考しますが、事は簡単では有りません。「気動車」というコトバが市民に受け入れられないのです。それでは、JRなどの鉄道企業は何と云っているのでしょうか? 単に「列車」と呼んでいます。JRの駅や車内の案内放送では「××線の列車は・・・・」「この列車は・・・・・」と云っているのを何度も聞いています。
先に紹介した広範な「列車」を適用したわけで、妥当と云えないことも無さそうです。
ところが、大宮に在る鉄道博物館では、展示の車両に「気動車 キハ-OO型」と明記していました。この例から忖度すると、JRは一般市民には「列車」、鉄道愛好者には「気動車」と使い分けているように思われます。

コトバは"活きもの"と云われます。誤用とされた表現が、いつしか既成事実になり、辞書に記載される例は少なくないようです。また俗語・卑語とされていたのが承認されるケースも有ります。
特に、この小文で扱ったコトバは出現当時は、一般人には縁遠い業界用語なのて゛、誤用や不適切な転用を生じ易いのでしょう。
さらに、業界用語といっても、工学・技術系、法律・規則系などが有ります。また、辞書の記述も、業界用語集を参照したケースと、漢字の字義から推したケースがあるようです。
「列車」について2種の説明を引用しましたが、広範な記載は前者の手法で、常識的には納得しやすい説明は後者の流儀に拠ってと忖度されます。
日常、何気なく使っているコトバですが、穿鑿すると種々の問題が在るもののようです。
                       <以上>

                 

« No.148:「電車」と云う語の誤用・乱用 (1) | トップページ | No.150:法律は常に後追いか? »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/575020/63579826

この記事へのトラックバック一覧です: No.149:「電車」という語の誤用・乱用 (2):

« No.148:「電車」と云う語の誤用・乱用 (1) | トップページ | No.150:法律は常に後追いか? »