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2016年8月 5日 (金)

No.155:「昭和一桁生まれ」の妄言多々(3)

「ジエーン海軍年鑑」について

英国で1898年に創刊された著名な年鑑で、世界各国の軍艦の写真・外形図・要目性能を網羅したハンドブックでした。戦前版はB5版横組みでしたが、現在はA4版縦組みの体裁になっています。
20012002 左図は、比較的新しい版の表紙を示します。(1940年代の版を探しましたが見つけられませんでした。)
海軍力は国威のシンボルですから、各国とも秘密として隠すよりも公開する傾向があったようです。とは云うものの、核心に触れる箇所は秘密にした筈です。それですから際どい部分の情報を如何にして入手し、編集して公刊書として世界に向けて発売したのでしょうか?
嘗ては全世界に植民地を持ち、諜報網を張りめぐらした大英帝国の支配力の一端を示すものと云えそうです。

この年鑑が最も広く読まれたのは、第二次世界大戦の直前であったと思われます。当時、日・英・米は世界の三大海軍国として知られ、次いで仏・独・伊・露が海軍力の増強に狂奔していました。そのような時代でしたから、軍事関係部署はもとより、政治・経済・外交などの官庁から大学・研究所・図書館に至るまで備えました。他国でも事態は同様であった筈です。

1940年頃に、この書物の邦訳版が現われました。いわゆる海賊版であったようです。当時、欧州大陸には戦雲が立ち込め、日本は独伊と同盟を結んでいて、米英とは緊張関係にありましたから、著作権などは問題にしなかったのでしょう。
老生は、当時小学上級生でしたが、日本橋・三越の書物売り場で見つけ、飛び立つ思いで購入して、読み耽りました。この版はA5版ぐらいの横型で原本よりも小さく、記載内容もダイジェストだったようです。
価格は3円50銭ほどでした、今日の物価に換算すると1万円ほどに相当します、小学生にとっては高価な買い物でしたから、父親は渋い顔をしていました。

老生は、この書物に記載された日米英の主要艦艇の艦名・艦形・性能などを殆んど記憶しましたし、また、総トン数・速力・兵装などについてり比較一覧表を作ったりしました。
今でも戦艦「陸奥」「長門」の総トン数 32720トン、速力23ノットという数値を覚えています。この値は戦後になって、総トン数は40000トンを超え、速力は26.5ノットであったと知りました。大英帝国の諜報能力にも限界があったのでしょう。
その一方では、大戦末期の版では「大和」「武蔵」が記載されていたそうです。日本国内では秘匿されていて、戦後になってから存在を知ったのですが、英国は逸早く掴んでいたのです、もっとも、細部については誤りもあったそうですが。

「軍国少年・兵器オタクについての蛇足」
思い出すままに、嘗ての"軍国少年・兵器オタク" の生態の一端を記しました。10歳そこそこの子供が、そこまで夢中になり、且つ一般の兵士・軍人よりも詳しい知識を持ち得たのか? と感じる人もいるでしょう。
その疑念は当然でしょうが、何時の時代にも、どのような分野でも、特定のテーマにのめり込む年少者は少数存在するものです。
老生のような "兵器オタク"は小学校のクラスに数人は居ました。旧制中学に進学しても同様で、且つより高度の知識・情報が流れていました。
戦後、これらの人々の多くは大学・高専に進み、工学を専攻したようです。そうして卒業後は研究者・技術者として、高度経済成長・技術革新を一翼を担いました。かく云う老生もその一員でした。敗残の焼け跡に僅かに残った大学の研究室の同僚の大半は老生と同様の経験を持っていました。

ところが、このような事跡は、殆んど伝えられていないようです。戦中・戦後の歴史・秘話・社会・世相を記した書物は硬軟取り混ぜて多数有りますが、上記したような"兵器オタク"に関る記録・記事を見たことは有りません。
先日、「B面 昭和史 1926-1945 (半藤一利)」を一読しました。600頁もの大作ですが、前述した軍事科学雑誌や軍事科学啓蒙書の存在には触れていませんでした。僅かに「科学朝日」が原子爆弾可能性について著名物理学者
の意見を掲載した、との記述が見られただけでした。
また、「暗黒日記 (清沢洌)」や「昭和恋々(山本夏彦)」など、戦中・戦後の世相の実態を活写したとされる書物にも全く触れられていません。
狭い特殊な分野の秘話的な事跡だからこそ、忘却・埋没に任せるのに忍びず、敢えて一文を草しました。
                      <以下次号

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