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2018年3月10日 (土)

No.183:RCA社の興亡に想う (3)

<トランジスターの衝撃>
 1948年に米国ベル研究所は半導体を素材とする活性素子「トランジスター」を発表して、世界に衝撃を与えました。電子技術の最重要部品である真空管に代わる素子として報じられたからです。
 真空管はガラスの真空球の中に電極を配置し、その中で電子を操る事によって、電気信号を制御するデバイスで、繊細な構造のために振動・衝撃に弱く、寿命は数千時間と短かい等の弱点が有り、悩みのタネでした。
 ベル研が発表したトランジスターは、超小型・軽量・低消費電力・耐震・耐衝撃・長寿命、の触れ込みで、真空管の弱点を全て解消したかのように伝えられました。
 このニュースは、真空管王国を誇ったRCA社にとって衝撃的であったことはでしょう。同社は対応策として、トランジスターの研究開発に着手する一方、真空管の改良に努めました。
   左図は、RCA社が発表したトランジスター "2N404"です。                                                                     
Rca_2n404_41959_nuvistor21_3
このトランジスターはゲルマニウムを素材にしていますから、かなり早い時期の製品です。初期には、どのメーカーもゲルマニウムを素材としたのですが、温度特性が悪いので、回路設計者は苦労しました。また、高周波では使えない、大電力を扱えない、パルス性の大入力に弱いなどの欠点が共通して有りました。
   右図は "ニュービスタ" と銘打った RCA社の真空管です。初期のトランジスターの欠陥を持たず、しかもトランジスターの特長である低消費電力・耐震・耐衝撃・小型・軽量を実現しました。唯一の弱味は電源が高低の2種類を要した事でした。真空管としては最後の製品と云うべきでしょう。
  一方でトランジスターの業界にも次々と進化が見られました。素材をシリコンに代えたのが飛躍の第一歩で、温度特性が改善され、高周波・大電力も可能になりました。
  その過程でRCA社が1970年に開発したシリコン・ウエファーの洗浄法は業界で広く使われました。この事実は、同社がトランジスターにも注力していた事を示しています。時折、技術コメンテーター氏などが 「RCA社は真空管王国の実績に安住して、半導体の進歩に乗り遅れた・・・・・」 と云う類の発言をしますが、如何なものでしょうか?
  RCA社は8ビット・マイクロプロセッサー "GDP1802" を1976年に発表しました。パイオニアのインテル社には数年の遅れが有りましたが、放射線や静電気放電に強い特徴を備え宇宙機器に賞用されたそうです。 (下図)
1976_8bit__rca_1802
  このような事例を見れば、同社が真空管の成功体験に囚われた、との評は酷に過ぎるように感じます。
    電子産業界には、超小型化・高密度化・高信頼性を追求する流れも有り、集積回路はその解答でした。RCA社は集積化が難しいとされるアナログ回路に対して、マイクロモジュールを提案しました。
1958_1s1958_2s
左図はマイクロモジュールの一例です。右図はそれを構成するセラミック基板で、約1㎝ 程の正方形です。その上に印刷抵抗やコンデンサを形成、トランジスターやコイルを蒸着し、それら数枚の基板を積み重ね、プラスチックで固めました。個々のマイクロモジュールは増幅・発振・変調・検波などの機能を備え、目的に応じて組合せて電子機器を構成しようとする発想でした。
 日本の 「学研」 が "電子ブロック" なる教材をは発売してベストセラーになった事が有りますが、これはマイクロモジュールの思想を継承したとも云えそうです。
 RCA社のマイクロモジュールは残念ながら大成しませんでした。電子機器は一般に微調整(擦合せ)を必要としますが、マイクロモジュールの構造では却って困難です。個々のモジュールの精度を高めて、擦合せ不要を実現できれば理想ですが、それは当時のレベルでは無理な要求でした。日本でも数社が追随しましたが、何処もギブアップに終わりました。
                <以下次号>

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