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2018年6月 8日 (金)

No.190 :名論卓説 & 迷論惑説 (2)

4. [ 秋山真之の慧眼 ]
Photo_4  日本海海戦を完全勝利に導いた名参謀・秋山真之は、第一次世界大戦に際し英国を視察した時、兵器工場で女子工員が生産に従事しているのを見て一驚し、それが可能なのは標準化・自動化が徹底している故と看破した。
 当時の日本の産業との格差を痛感し、近代戦を遂行するのは難しいと憂慮した。
<たまの玄太の一言>
 秋山真之は日露戦争において、連合艦隊・作戦参謀として活躍した人物。日本海海戦でバルチック艦隊を相手に完全勝利を収めた立役者でした。
 その彼が、後年に英国視察で得た見解は、前線での戦闘を支えるのは近代科学技術とその生産体制に在り、という卓見でした。
 蛇足を加えると、第二次大戦において、英国のレーダーはドイツを凌いだが、その生産には多数のラジオ・アマチュア(素人無線愛好家) が協力した、と伝えられています。これに対し、ドイツでは国家情報の漏洩を警戒してラジオ・アマチュアの活動を制約していたので、レーダーの開発・生産で遅れた、と云われています。
 秋山真之は、近代戦が科学技術戦であり総力戦であることをは逸早く看破した慧眼の士と云うべきでしょう。
 
5. [ステイーブ・ジョブズ論 ] : 坂村 健
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  米国アップル社の創業者の一人であるステイーブ・ジョブズ氏は科学者でも技術者でもない。氏は新しいビジョンを示し、それを事業として実現する起業家として成功した。
 氏のヒット製品のどれも、その要素技術は自社で開発したものではない。他処で開発された様々な技術を巧みに組み合わせ、優れたデザインと操作感で、人々の潜在的な欲求に応えた製品を適度な価格で提供した。アップル製品が使っている部品の過半数は日本製である。
 インターネットの検索ソフトは日本が先行したが、企業は著作権問題を気にして二の足を踏んだ。
 アップル社はネットを介して楽曲を取り込むサイトを開設した、著作権問題の起きるのは承知の上で推進したと云われる。果たして訴訟問題は山積したが、事業は大成功を収めた。
  日本は訴訟文化に馴染まず、裁判沙汰になりそうな事業には手を染めない風土がある。
 日本の法律はドイツ流で、事前にあらゆる事象を想定し、相互に矛盾のないようにするので、制定も改正も時間がかかる。英米流は、取り敢えず法をつくり、問題が起これば裁判の判例で解決するので、早く対応できると云われる。
 さらに、日本では大手メーカーが人材を抱え込んでいる。米国では、主役の企業そのものが新陳代謝して、優秀な人材もそれにつれて動く。米国ではアイデイアを評価して、ベンチュア企業に投資するが、日本では担保がないと金を出さない。
 法律や制度を改めない限り、日本ではジョブズ氏のような逸材を活かせない。
 ビジネスの趨勢は、ネットは介して有用なサービスを提供する企業が主役になる。機材や素子を提供するメーカーは脇役にならざるを得ない。
<たまの玄太の一言>
論者の坂村 健 教授はリアルタイムOS "トロン" の開発者として世界に知られた情報科学者です。この論評はジョブ
Photoズを論ずると云うよりも、日本の学会・産業界に対する警告のニュアンスが強いように感じ取れますが、正に正鵠を射ています。

 

 老生が以前に読んだ高名なジャーナリストの著作で、ジョブズに言及した箇所が有りました。それには、ジョブズはコンピューターも経営学もドロップアウトしたが、カリグラフィー(ペンによる西洋書道)に熱中したと記して在りました。

 

 その書物では、近年日本の企業から画期的な新製品が出ないが、それは関係者の教養(文学・芸術・歴史・哲学・・・・)が無いからだと断定し、理系人も教養(文系)を積むべし、と力説していました。そうして、ジョブズの成功には、カリグラフイーの素養などの教養に依ると説いていました。ずいぶん粗っぽい且つ科学技術や企業経営の世界を知らない論法です。

 ジョブズはいわゆる「尖った人材」で、天才的な閃きとカリスマ的な指導力によって成功したのです。また、それを支える企業風土に恵まれていました。多方面にわたる教養(文系)の成果では有りません。
 坂村教授の論評は、遥かに実態に迫っていると、老生は評価します。

             <以下次号>

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