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2018年6月26日 (火)

No.194 : 名論卓説 & 迷論惑説 (6)

10. [ "子供の科學" 創刊の辞] : 原田三夫
  1924年に創刊した少年を対象とする科學雑誌 "子供の科學" の編集主幹であった原田三夫氏 (故人) の創刊の辞を紹介します。旧仮名遣い・旧漢字なので違和感を抱くかと思われますが、敢えて原文を転記しました。
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 愛らしき少年少女諸君 !!! 子供科學画報は、皆さんのために、次のやうな役目を持って生まれました。
  およそ天地の間は、びっくりするやうな不思議なことや、面白いことで、満ちてゐるのでありますが、これを知ってゐるのは學者だけで、その學者のかたは、研究がいそがしいものですから、皆さんにお知らせするひまがありません。 したがって、多くのかたは、それを知らずに居ります。そのなかで特に少年少女諸君の喜びそうなことを學者のかたにうかがって、のせて行くのも、この雑誌の役目の一つです。 
  皆さんが學校で學んでゐる理科を、一そうわかりやすく、面白くするために、その月々に教はる事がらについての寫真や繪を皆さんのためにそろへるのも、この雑誌の一つの役目であります。理科の本にかいてある事がらに限りません。読本のなかにある理科の事がらに關するものも、のせておきます。
  毎日のやうに見たり使ったりしてゐるもの事について、皆さんは、くはしく知りたいと思はれることがありませう。皆さんの御望みを満たすため、画を入れてできるだけわかりやすく、さういふもの事を説明するのも、また、一つの役目であります。
  簡単な器械の造りかたをお傳へして皆さんの発明の才をあらはし、面白い理科の遊びのできるやうにするのも、役目の一つであります。
   しかし、この雑誌の一ばん大切な目的は、ほんたうの科學といふものが、どういふものであるかを、皆さんに知っていただくことであります。ちかごろは 「科學科學」 とやかましくいひますが、ほんたうに科學を知ってゐる人は、澤山ないやうです。人は生まれながら、美しいものを好む心を持ってをりますが、それと同じやうに、自然のもの事についてくはしく知り、深くきはめやうとする慾があります。昔から、その慾の強い人々がしらべた結果、自然のもの事のあひだには、澤山の定つた規則のあることがわかりました。科學といふことは、この規則を明らかにすることであります。多くの人が科學といつてゐるのは、大ていは、その応用に過ぎません。この規則を知ることによつて、人間は、自然にしたがつて、無理のないやうに生き、楽しく暮らすことができ、これを応用して世が文明におもむくのです。
 
<たまの玄太の一言>
  「子供の科學」 を創刊し、編集主幹を務めた原田三夫氏は東京大学理学部植物学科を卒業し、科学知識の普及に尽力した方です。科学ジャーナリストのパイオニアと云えます。上記した "創刊の辞" は、氏の高揚した意気込みが感じ取れます。
  1920年代頃、日本の初等教育界は「読み・書き・そろばん(算術) が中心で理科は2番手の扱いであったようです。老生は1936~1942年にかけて小学校に在学しましたが、そのようなウエイト付けは感じ取れました。小学校では一人の先生が全教科を教えますから、子供でも何となく判ります。要するに教科書を棒読みするような授業で実験・実習などはゼロに近かったと記憶します。なお、老生が在学した小学校は東京の住宅地に在った一種のモデル校で、優秀な先生が集められていましたが、それでも理科の授業はお粗末なものでした。
  原田氏は東大卒業後に旧制中学 (今の中高一貫校に相当) の教員をしていた時期が有りましたから、当時の理科教育の貧弱さを痛感していたと思われます。
  氏の創刊の辞の要点は、科学者と一般人 (少年) の間の橋渡しをしようと云うこと、模型工作を介して興味を起こさせようとすること、しかしながら科学とその応用 (技術) は同一では無いこと、であろうと思われます。
  「子供の科學」 の読者から、多数の理系人材が育ちました。日本の1960年頃からの高度成長・技術革新を支えた研究者・技術者には、「子供の科學」 に よって啓発されて理工系に進んだ人が多くいました。老生もその一人です。大学の級友にも、就職した職場にも、同誌の模型工作記事に魅せられたと語る人は幾らもいました。
  原田氏が、科学と応用は区別されるべきと説いたのは卓見ですが、読者から応用分野 (工学・技術) に多くの人材を輩出した実績に、泉下の氏はどのような感慨を抱かれたのでしょうか? 
            <以下次号>

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