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2018年11月 5日 (月)

No. 203 : 昭和一桁生まれが学んだ教科書 (1)

  老生は1929年即ち昭和4年生まれです。正に昭和一桁の中核です。この世代の人々は、戦前・戦中・戦後を知る生き証人ですが、既に多数の方は鬼籍に入っています。
世に、その時代の市民生活を語る人は多く居られますが、小中学校での学習経験に触れた例は多くはないようです。
  老生は、小中学生時代に使用した教科書の一端を紹介し、併せて当時の風潮に言及したいと思います。
 
[ 緑表紙の算術教科書 ] 小学校
Photo      上左図が主題の緑表紙の算術教科書で1934年から導入されました、上右図はそれ以前に使われていた黒表紙の教科書です。新しい緑表紙本は世界水準を抜く斬新・画期的な理念に基いて編纂されたそうです。今でも 高く評価した論文・著作・評論を散見します。
  老生は数学者でも教育家でも有りませんが、一児童として深く関わり、数理の片鱗に触れた感覚を持ちました。  その例を示します。
 
1.  円周率を求める、それは円に大小に関わらず一定。
  先生の指示により、茶筒の周囲長と直径を実測して、その比を求めました。次いで運動場に大きい円を描き、その周囲長と直径を巻尺で 測り、その比を求めました。
  この作業により、円周率は3.1から3.2の間の値らしいことが判りました。そこで先生は、円周率は円の大小に関せず一定である、精密な計算では、3.141592・・・・と無限に続く数であると説明し、現在では707桁まで計算できている、と解説しました。
  一連の実習と先生の説明により、円周率を把握し、さらに深遠な数理の世界を垣間見た思いがしました。
     遥か後年に至り、「ゆとり教育」とやらで、円周率は3と覚えれば良い、と伝えられました。後に誤解であるとして撤回されたようですが、緑表紙の理念からすると、 暴挙極まれり、と感じます。
2. 面積の理解は単位正方形から。
  1センチ四方の正方形を想定し、それを1平方センチという面積の単位とします。例として、タテ6cm、横9cmの長方形(矩形)を対象として、その中に単位正方形が何個入るかというと、図解すれば明らかに54個入る事が判ります。つまり、この長方形の面積は 54 平方センチ というわけで、数式では、(タテ)×(ヨコ) = 6×9 となります。
   この考え方を三角形に適用すると、単位正方形にキッチリと入らない部分が出ます。それを1/2 として数えると、(底辺)×(高さ)÷2 という公式に至ります。
   円の場合は、多くの扇形に分け、それを三角形に近似して同様の手法を用いれば、(半径)×(半径)×(円周率) なる周知の公式を誘導できます。
   老生らは、このようにして面積の概念を教えられ、公式の由来まで習いました。
3.旧制第一高等学校の入試に出た問題も。
  旧制第一高等学校は今日の東大教養課程に相当する教育機関で、天下の難関と称されていました。
Photo_3  その入試問題と同じ問題が緑表紙本にも掲載されていて、話題になりました。
  左図の大きな円の直径を3とし、直径1の半円、直径2の半円を結んで図を構成すると、A,B,C の面積は如何に、という出題でした。
  一高の受験生の場合には、幾何と代数を駆使して、3段論法的な論理を構成しなければ合格点は得られないでしょう。 小学生の場合は厳密な論理構築は要求されないとしても、「円の面積の公式」を頼りに、3部分の面積が等しいことを説明しなければなりません。
  これは、かなりの難題でした。その理由は形が馴染みのない曲線である事、具体的な数値が示されていない事、
単なる計算ではなく、説明文を要する事など難題の所以でした。
 
  この教科書の誕生した経過については、幾つかの考証があります。往昔の黒表紙本が、「読み、書き、算盤」の時代から脱却せず、加減乗除や利子計算が主題であったのに対し、より深遠な数理の世界を知らしめようとの意図によって編纂された、と云う論調が多いように感じました。
             <以下次号>


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