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2018年11月13日 (火)

No.207 : 昭和一桁生まれが学んだ教科書 (5)

[ 旧制→新制 過渡期の教科書]   新制大学
  1945年8月以降、日本は米軍の占領下におかれ、その政策の一環として大幅な教育制度の改革が強行されました。その理由や経緯は種々公表されていますから、ここでは省略し、目立った変化について記します
  先ず就学年数の差です。
  旧制度では、小学6年-中学5年-高校3年-大学3年
  新制度では、小学6年-中学3年-高校3年-大学4年
というわけで、全年数は旧制度が17年、新制度が16年となります。
  老生は過渡期に遭遇したので、旧制高校(相当) 2年次を終えた後に新制大学2年次に編入、という極めて変則的なコースを経ました。もっとも、そのために就学年数は16年で済み、旧制度より1年早く社会人になりました。それですから、学費が1年分少なくて済み、親孝行になりました。
      老生は1947年に旧制中学を終え、進学しました。敗戦後2年を経た時期ですから、東京を始めとして全国の都市は焼土と化し、全国の諸産業は壊滅状態でした。教育関係も例外ではなく、校舎は破壊され、書物・教材なども極度に不足していました。
   老生の進学した学園は、校舎の1/3 ほどが被災していました。窓ガラスは破れ、暖房は壊れ、照明は暗い、実験設備は破壊という惨状でした。
 
      そのような時代ですから、教科書など有りません。もともと、大学の授業は教授の講義が中心ですが、それでも基礎的な学科の教科書は刊行されていました。老生の専攻の電気通信工学に関しては、「電磁気学」や「交流理論」などの教科書が、戦前には発行されていました。
ところが戦後数年は、出版社も印刷所も製紙工場も製本所も被災していて、新刊どころ旧版の再刊も不可能でした。
   教授は口述と板書で講義を進めました。しかし、理工系の授業には、数式・図表・図解が伴います、これを欠くと正確な知識は伝えられません。時々、いわゆる "ガリ版刷り" のペーパーが配布され、知識の欠落を補われました。

<級友が手分けして、戦前の古書を探す>
   やがて、級友の中から戦前・戦中に発行された教科書を探そう、という話が持ち上がりました。東京には世界でも有名な神田古書店街が在り、幸いに戦災を免れていました。また、東大・早大の周囲にも古書店が散在していました。
Photo  左図は神田神保町の明倫館書店です。理工系の専門店として知られていました。 級友は手分けして、これらの店を探し回り、かなりの書物を見つけ出しました。学生はこれらの書物の要点を書き写し、次々と回覧したのです。
  蛇足を云うと、この時期にはコピー機は存在していません。写真を撮るという手段も有りましたが、接写の出来る機材は少なく、経費も高価でした。要点の筆記でさえも、ノートの不足に悩まされたものです。
   この時に見つけた書物を思い出すと、「電磁気学 (抜山平一)」 「交流現象論 (黒川健三郎)」 「真空管回路 (廣田友義)」 「解説無線工学 (武田行松)」 などでした。
   このような探索を続けていると、戦時中に軍部のバックアップに依り海外の専門書が複製されていたのを見つをけました。
   近代戦は科学技術戦であり、各国とも研究・開発に狂奔しました。日本の軍部も、あらゆる手段を尽くして海外の資料を入手し、コピーを作り関係者に供しました。(作家・野坂昭如は、その事績に触れた作品を書いています。) そのような資料が、敗戦後に古書店に流れ出たのです。 老生が見聞した幾つか列記します。
   "Radio Enginering" : F.E.Termann
       "Raidio Frequency Measurement" : F.E.Termann
       "High Freqency Measurement": Fund
       "Electromagnetic Theory" : Stratton
   "Ballow's Table" : Ballow
   "Function Table" : Yanke-Emude

<海外の専門書は宝の山
   1950年頃になると、一部の技術官僚・大学教授などの海外視察が始まり、彼等は海外の専門書を持ち帰りました。その話を聞き傳えた官学産の関係者は "宝物拝見" とばかり参上し、筆写・撮影をさせて貰いました。
そのうちに、これらの資料の "そっくりさん" を造る地下業者が現れました。いわゆる "海賊版" です。この行為は非合法でしたが、世相は混沌とした乱世でしたから、この程度の "文化的犯罪?” は黙認・放置されていたようです。
老生らも卒業研究の際には大いに活用しました。
            <以下次号>

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