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2019年5月25日 (土)

No.217 :日本産業の衰退に想う (5)

「続・"プロジェクトX" の時代は終わったか」

     テレビが "プロジェクトX" などの番組で、世の関心を集めていた頃に、ノンフイクション作家・評論家らによる先端技術開発の物語が幾つか発表されました。著者は、田原総一郎・柳田邦男・立花隆・内橋克人らの錚々たる人々でした。書物の形だと細部に及ぶ記述が在り、また要点を探しながら何度も調べる事が出来るのでテレビ映像よりも記録としては有効だと思われます。
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  しかしながら、このようなカテゴリーの書物は、2000年ぐらいから、激減したように感じます。低成長時代に入り、画期的な製品が生まれにくくなったのと、人々の関心が薄くなったからでしょうか?
この現象は「ニワトリが先か、タマゴが先か?」の論争と似ていますが、敢えて云うならば実績が先行すると、老生は思います。( ただし、実績が先行するには、ある前提があるのですが )

  1945年の敗戦の時、全土は焼土・廃墟と化し、生活水準は何十年も昔の状態に逆行しました。その時に、米占領軍を介して伝えられたた米国市民の生活は、目が眩むほど華やかなもので、夢の生活と感じられました。日本人の生活が米国のレベルに達するのは、永久に不可能とさえ思えたものでした。
それでも、多くの無名の市民は、幾らかでも生活を向上させようと、必死に努力し知恵を絞りました。その結果、1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記されるまでになりました。約10年にして経済規模・市民生活は戦前の水準に戻ったのです。
  一方、米国などでは、戦時中に開発された先端技術が民需に波及して行きましたので、市民生活はより便利で快適になりました。それですから、日本が進めば米国はさらに進む、と云う状況で日米格差は容易には解消しませんでした。
1960年に池田勇人総理は「所得倍増論」を提唱しました。その政策
の中には「科学技術振興策」が有り、工学系の高等専門学校を多数新設し、大学の工学部を増強しました。この技術教育の成果は 続く「高度成長期」に示され」、自他ともに認める技術大国に成長しました。そのような社会情勢に於いて "プロジェクトがX” 的な行為は幾らも有りました。その中で大きな成果を挙げた例がテレビやノンフイクション作品で紹介されたのです。
   1980年に "バブル崩壊" にが起こり、金融機関は不良債権 (多くは不動産・建設関連) の処理に苦しみ製造業への融資を引き締めました。そのために、研究開発費が窮屈となり、魅力的な新製品が生まれ難くなりました。それでも営々と努力を重ねて、停滞から脱しかりましたが 2008年にはリーマン・ショッックが起こって、再び不活発な状態に戻りました。
企業は利益を得ても、研究開発費に回さず、社内留保に向けました。このような職場環境では、"プロジェクトX" のような "アンダ
ーグラウンド研究"  さえも困難になります。全ての管理体制が厳しくなり、時間外の無料作業も、廃棄処分資材の流用も出来ません。要するに、高度成長期には黙認されていたモロモロの事が、不況・停滞下では禁止されるのです。それですから、非公認ながら 「金の卵」 を産むかも知れない活動は出来ないのです。
   このような情勢下では、正規の研究開発活動も不活発になります。企業トップは研究開発費を投入するからには、相応の成果を期待します。そうなると、研究開発者も先を読みやすい在来技術の延長のような小型テーマのみを提案するようになります。前人未踏の大型テーマは成功の確率が低く、実験的試作には成功しても、実用品として生産・販売・に繋げるには多大のリスクを伴うからです。

  2000年頃から、日本人のノーベル賞受賞者が続出しました。真に慶賀に値しますが、報道機関の扱いは一過性でした。出版界の反応も鈍いものでした。受賞者の田中耕一氏 (後に東北大名誉博士) や中村修二博士 ( 後に米大学教授 ) は著名大学や大研究機関に属さずに、中堅メーカーの研究開発者として業績を挙げました。お二人には、 "プロジェクトX"  的な秘話・苦心談が幾らもあった筈ですが、ジャーナリズムは関心を示さなかったようです。テレビの特集シリーズやノンフイクション作品の発表は見られません。
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上左図は田中耕一氏、上右図は中村修二教授です。
  停滞期だからこそ、大きく取り上げ士気能力向上を図るべきではないでしょうか?

                               <以下次号>

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