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2019年5月 9日 (木)

No.215 :日本産業の衰退に想う (3)

「 脱成長論の横行-1」

  高度成長の最盛期である1970年に、某大新聞が 「くたばれGNP」 という特集記事を連載しました。その数年前から公害  (大気汚染・光化学スモッグ・有害物質流出など) による生活環境の悪化が指摘され始めていましたが、この記事は多くの実例を示して大々的な警告を発したのです。
    それ以前にも 「四日市ぜんそく」 「水俣病」 などが個々に報道されていましたが、この記事はそれらを集成した上に、然るべき法規制や事業者の社会的責務、さらに市民の対応策などに至る大キャンペーンでした。政治家諸侯は、始めのうちは企業の活力を削ぐような規制には消極的でしたが、次第に市民の要望に押されて多くの規制が実施されるに至りました。

   その事は真に時宜を得たと思われますが、そのタイトルが強すぎました。"GNP (国民総生産) を伸ばす事そのものが悪である"  というニユアンスで受け取った人が少なくなかったようです。
その記事の10年前に池田勇人総理が 「所得倍増論」 なる政策を唱え、精力的に推進しました。"10年後には GNP を2倍にする" という計画で、多くの人は「実現困難な夢物語」と受け取ったのですが、計画よりも2年早く1968年に達成しました。しかも、その年の GNP は世界第2位に達したのです。この成果は世界経済史に残る偉業でした。しかしながら、奇蹟と云われるほどの成果を収めた陰には、かなりの無理というか、周囲への配慮に欠ける局面が存在したことは否定できません。
  それは、環境問題と過密労働です。殆どの生産工場は何らかの有害物質を排出します、それを完全に無害化するのが望ましいのですが、そのためのコストは少なく有りません。それですから、多くの企業は規制値ギリギリでお茶を濁しているのが実状でした。しかも、中には規制値を超えるケースも有りました。そのような "目こぼし" が増えると環境汚染は進みます。
また、労働時間は未だ週48時間でしたし、残業規制も今から
見れば甘いものでした。老生の記憶では、月間100時間は常態化し、150時間を超える猛者も珍しく有りませんでした。
  このような実態が明らかになるにつれて、高度経済成長についての反省が生じ、遂には 「くたばれ GNP 」 的な極論が現れたのです。その執筆者は 「経済成長そのものを否定したのではない、行き過ぎに伴う負の面にも気を配るべきだ」 という心算だったでしょうが、如何せん、タイトルが強烈すぎたようです。亜流の論者が次々と現れ、経済成長そのものを否定するような空気を醸成しました。

「脱成長論の横行-2」

  日本の高度成長、特にハイテク製品の輸出は米欧先進国には脅威となりました。家庭用電子機器は世界に浸透し、特にVTRは独り勝ちでした。電子技術を多用した一眼レフ カメラは永らくカメラ王国を誇ったドイツを圧倒しました。半導体メモリは質・量ともに世界一を誇り、液晶パネル・太陽電池などもダントツでした。このような情勢に対して欧米から 「日本人働き過ぎ論」  が浮上しました。いわゆる  「うさぎ小屋に棲む働き中毒の奴ら」  と云う悪罵です。初めは政府の交渉当事者間でのジョークだったようですが、国内のジャーナリストが採り上げ、次いで評論家・コメンテーターが恰好の話題にしました。
  評論家諸氏は "QOL (Quality of Life ・生活の質 )" なるコトバを持ち出して、「日本人の年間労働時間が欧米先進国に比して多い 」  と論難しました。このような論法で老生が違和感を抱くのは、各国の国情に触れず、単純に数値のみを比較して論じている事です、さらに云うならば、なんらの問題解決の具体的な提案が無いことです。
  日本の人口は世界の 1.7 % 程度です、国土の面積は 0.25 % です、またGDP (国内総生産) は 5.8 % ほどです。これから判るのは、日本の人口に比して国土は狭いと云うハンデイを持つにも関わらず生産性は高い、と云うことです。換言すれば、狭い住居に住み、忙しく働かざるを得ないのが実態です。このような観点から論陣を張ったのは、老生の知る限りでは 故・唐津一教綬でした。教授は 0.2-2-16 と云う数字を挙げて力説しました。 0.2 は国土面積比率、2 は人口比率、16 はGNP比率です。この数値については、粗い四捨五入や当時のデータによるもので前記の数値と差異が有りますが、趣旨は同じです。 
                        Photo_20
上図は、唐津一教授です。老生の知る限りでは、人口・国土面積・国内総生産をリンクさせて論じた方は教授の他にはいなかったようです。蛇足を云うならば、教授は「そのような環境条件だから、我武者羅に働け」と説いているのではありません、「付加価値の高いユニークな製品を開発するのが肝要だ」と主張しているのです。

            <以下次号>

 

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