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2019年10月10日 (木)

No.229 : 昭和一桁生まれの読書遍歴 (8)

11. 「知的生産・資料管理に関わる本」

    1969年、「知的生産の技術」  なる新書版の書物が話題になりました。著者は梅棹忠夫教授でした。その書の冒頭に、「研究者・評論家・文筆家などが論文・作品を創造するのに際し、資料の収集・管理を如何に行うか、また、事務用品や器具をどのように活用するか、という事も殆ど知られていない。それ故、各自が手探りで自分なりのノウハウを編み出しているようである。この書では、著者
の経験や手法を公開し、各位の参考に供するものである」 という趣旨を示しています。
    老生も卒業研究の遂行に際し、先輩の手法を見習うと共に自分なりの方式を工夫したものです。例えば、実験データーを記入したA4版方眼紙の左端に2穴パンチで穴を開けて、バインダーに綴じ込む、という簡単な作業でも、各人それぞれのノウハウが有ります。先輩に見習いつつも自分なりの手法を定着させた時には、研究者の世界に一歩踏み込めた気分になったものです。
    この書物の主張は  "京大型カード"  の紹介と活用法です。B6 版のハガキぐらいの厚さで粗い横線を印刷したカードに、断片的な情報や着想を書き込みケースに分類・収納する、それを絶えず目を通す事により、次第にアイデイアが集約され知的作品の種が生まれる
というのがミソです。この手法は、ルーズ・リーフの利用に似ていますが、B6版サイズの方が持ち歩き易い、ある程度の厚みがあるとパラパラと捲り易い、などのメリットが有ると説いています。また、カード1枚には1項目の記載を原則とする。B5版のルーズ・リーフだと、1枚に1項目は勿体ない気がして、つい数項目を記載してしまうが、これだと後で検索しにくい、とも指摘しています。
この手法は、かなり普及しました。老生の職場でもカード・ケースを共用して、それに各人が日々得た情報や着想を書き込んだカードを投入するような指示が出ました。メンバーは随時カードに目を通して業務に活用しようとしたのです。恐らく、他の事業体も同様な試行をしたと思われます。
           この書は、フアイリング・キャビネトやフラット・フアイルなどの道具立てについても言及しています。例えば勤務先や関係団体や官公庁からの通知などは、項目別のフラット・フアイルに挟み込み、それをキャビネットに収納する事を推奨しています。フアイルは綴じ込み式でなく、挟み込み式の方が使い勝手が良いと説いています。この種の書簡・通知の類は一過性の事が多く、用済みになれば廃棄するからです。
    この書は、従来は各人が自己流に処理してきた 「知的生産」  のための技法を公開したという意味で、画期的なモノと思われます。もちろん、この書に示された手法が唯一無二の正解ではありません。しかしながら、この後で多くの諸賢が自分の手法に言及しましたが、基本的な考え方は大同小異のように思われました。

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    前後して、川喜田二郎教授は 「発想法・KJ 法」  を著しました。これは、ある問題の解決に際し、関連しするコトバを紙片に書き、それを床に並べて何度も概観する、その中で関連のありそうな紙片を纏めてグループ名を付す、さらにグループ相互の関連を考察する、という手順で解決策を見出す手法です。米国から伝わった 「ブレーン・ストーミング」 の変形とも見なせます。差異は、ブレーン・ストーミングが数人で行われるのに比し、"KJ 法"  は1人でも行い得る、という事でしょう。

           立花隆は  "知の巨人" と称されるほど多方面にわたる執筆活動をしていますが、そのノウハウを語っています。氏はテーマを決めると、先ず資料集めにかかりますが、それには十数万円の資金と書物集めの籠を準備するそうです。それを持って神田の書店街に行き、これは、と思う書物を見つけると片端から籠に入れて購入するそうです。この際に購入するのは、初歩的な入門書・大学のテキスト的な本・高度の専門書だそうです。帰宅してからは、それらを読破して、その分野の全体像を把握し、その上で高度な専門論文を読み専門家と面談する、と云います。
別に資料の整理法としは、厚手の "A4版パイプ・フアイル"  に台紙を綴じ込み、それに新聞・雑誌・などの切り抜きを張り付けるそうです。このサイズだと、新聞1頁大でも折り畳んで貼れるメリットが有ります。台紙1頁に1件を原則とし、小さな記事でも1頁を占有させ、混在は避けます。
氏の大作 「日本共産党研究」 や「 臨死体験」  などの執筆に際し、活用したそうです。収集し資料のパイプ・フアイルは数十冊に達したそうです。

            野口悠紀雄教授は 「超整理法」 を著して、"整理しない整理法"   を提唱しました。必要な時に所要の資料が取り出せればよいので、分類整理そのものに手間暇かける事はない、と云う発想から生まれたそうです。一定サイズの封筒に資料を入れ、日付けと題目を記載し、その封筒を日付け順に並べる、その際、新しい資料は左側に配置する。また、右側に在る以前の資料でも参照したら最左端に置く。これを繰り返すと使用頻度の高い資料は自然に左端に集まる事になります。
この手法のミソは  "ヒトの記憶は年月とリンクしやすい"、 と想定しているように思われます。
その後、教授は同様な考え方をパソコンに適用した手法を提唱しています。

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           知的生活の第一人者と云えば、渡部昇一教授でしょう。教授は多くの著作が有りますが、一貫した主張は、「生涯の研究テーマに関わる書籍・資料は生活費を切詰めても座右に置くべきだ」  という事だと思います。教授は、手元に資料を置く重要性を説きます。図書館が整備されていても、ネットが即時性を持っていても、手元の印刷資料の方が有効適切である、との由です。教授は個人図書館というほどの設備を自力で造られました。教授は、一般市民層でも知的生活を志すならば、自己の書斎を持つべきだと唱え、試案を示しています。

    以上の諸賢の著作は、現在のように  "IT 機材"  が普及していなかった時代の提案でしたが、基本的な考えは、現代こそ活用すべきでしょう。一代の碩学が永年の試行錯誤を経て編み出したノウハウを上回る手法を身近に容易に得られる時代です。

                 <以下次号>

 

 

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