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2019年10月 4日 (金)

No.228 :昭和一桁生まれの読書遍歴 (7)

10. 「管理・経営・未来予測の書物が氾濫」

         1950年代半ばに「品質管理」と云う概念と技法が米国より伝えられました。戦時中に国産兵器のバラツキに悩まされた苦い経験に鑑みて防衛庁が真っ先に導入しました。この流れは民間企業にも波及し、各社は担当部署を新設しました。とは云うものの、五里霧中の手探りでした。この分野の提唱者である  "W.E.Deming 博士"  の書が参照されましたが、博士は統計学者なので、統計的手法がかなりのウエイトを占めていました。そのために "標準偏差"  とか  "信頼区間"  など、馴染みの無い専門用語が頻発して閉口した人が多かったようです。また、通読しても、「抜き取り検査の結果を統計処理するすれば、全数検査を省略できる」などと誤解・即断した方もいたようです。
   しばらくして、日本では  "Total Quality Control"  という活動が起こりました。「品質を創り込む」 という
スローガンが唱えられ、全国の企業に普及しました。計画・設計・製造・検査・販売・サービスの各段階で綿密に、"Plan-Do-Check-Action"   を実行し、総合的に高品質・高均質性を実現する、という活動です。各職場ごとに 「自発的にQC サークルを結成し、職位・職種に捉われずに問題を発見し、改善提案を行い、かつ実行する」  という運動でした。この結果、日本製品は高品質との評価が世界的に定着しました。しかしながら、今日的な労働観から見ると、自発的とは云いながら、サービス残業を提供させた事になります。また、ボトム・アップに頼り管理層は無為に過ごすのか、という批判も生じました。その故か、現在では QC サークル活動は低調のように感じます。

   次いで 「経営学」 ブームが起こりました。"P.F.Dracker 教授"   の著書が紹介され、その亜流や解説書が氾濫しました。例えば、某大出版社が刊行した 「経営学入門」  はベスト・セラーになりました。著者は気鋭の研究者という触れ込みでした。当初は、この流れに対して、実働第一線のビジネスマンは批判的な人が多かったようです。そもそも経営とは、能力も意欲も有り、多くの経験と激しい競争を経てトップの座についた人々が行う業務であって、中間管理職かそれ以下の人々には無縁の仕事と思われていたからです。それが、このブームに依って、ミドル層もそれなりの経営的なセンスと発想を磨かねばならぬ、と啓発されたのです。退社後の飲み会での話題も、単なる上役の悪口から、経営方針への批判にグレードアップしました。
   1967年には、「水平思考」 なる書物が話題になりました。著者は  "E.De Bono 教授"   です。問題を考える際に、在来的な視点ではなく、別の角度から見ろ、というのが論旨のようです。題名そのものが既に水平思考の産物でしょう。
   1979年には、"Ezra. Vogel"  著の  "JAPAN AS  NO.1"   が話題になりました。日本の GNP が世界トップを争うようになった頃でした。日本の製造業の躍進の要因を分析し、米国では何故できないのか? と云うのが主題のようですが、題名に釣られて日本でも訳書が広く読まれました。
         1980年には、"The Third Wave"  が話題になりました。著者は "Alvin Toffler"  でした。内容は、人類は狩猟採取の時代から農業革命を経て工業革命に達し、今や情報革命に移行しつつある、という事です。各革命期に際し、その波に乗り遅れた人々が社会の底辺に沈むという警告は衝撃を与えました。

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         1985年には、堺屋太一が  「知価革命」  を著しました。多くの生産物の価格は材料費・労務費・利益で定まるが、さらに知恵の価値が多く組み込まれるようになる、と云う主張です。例えば、"音楽CD"  の場合、CD盤のコスト、ミュージシヤンの出演料は当然ですが、作詞家・作曲家の印税も加算されます。この印税が知価に相当します。衣服のデザイン料もそうです。堺屋氏の主張は、あらゆる製品で、"コストに知価の占める割合が増加する"  と云うわけです。自動車や電子機器のような工業製品でも、外形デザインだけでなく特許料や設計・製造ノウハウなどの知価が詰まっています。敷衍すれば、「機能だけの工業製品は途上国に追い付かれる、先進国は知価を採り入れた製品で付加価値を稼がねばならない」 と云う事でしょう。

           <以下次号>

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