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2020年5月 4日 (月)

No. 241 : 小説を読んで疑似社会体験 (1)

1. コロナ篭りの日々が続きます。家庭内で過ごすには、テレビ・読書・家庭内の整理、軽い体操、DIY ( 日曜大工や趣味の工作など )  ぐらいが最大公約数ではないでしょうか?
卒寿を超えた老生も、かなりの時間を読書に充てています。とは云っても新刊書の購入は経済的な制約があり、公共図書館は休館中ですから、旧い蔵書から選んで再読するしか有りません。

2.   「 黒革の手帳  ( 松本清張 ) 」  を読み返しています。 40年も前の作品です。この作品は上昇志向の強い銀座のバーのオーナーママのサクセス・ストーリーです。作品が発表された頃、老生は某上場企業の中間管理職でしたが、通読して別世界の感を抱きました。当時は高度成長・技術革新の嵐の中でしたから、老生は開発部門で成果を挙げるのに没頭していたからです。同期の仲間でも営業部門にいる連中は、顧客の接待に明け暮れていて、銀座の高級クラブに馴染みを持つ人もいました。しかしながら、技術系の者は全く無縁でした。
   今回、再読して作者の調査能力・物語の構成力に感嘆しました。そうして、世の中には膨大な 「 裏金 」  が存在し、その流れが表の社会にも少なからざる影響を与える事を再認識しました。
作品の登場人物の一人に、婦人科・美容外科の病院長がいます。健康保険の適用外の治療・手術で得た膨大な金額を、銀行には架空名義・無記名で分散して預金して、税金の網を逃れるというテクニックが詳しく記されています。受け入れ側の銀行も、その実態を知りながらも黙認・協力します。
また、医大受験予備校の理事長は、合格率を上げるために医大の経営層や監督官庁の幹部に働きかけます。いわば、裏口入学の仲介役をするわけで、その間に多額の運動費が予備校生の父兄から流れます。当然、少なく無い手数料が理事長の手に渡るわけです、税金などはかかりません。
このような裏金の秘密を知った30台の女性銀行員が、それをタネに勤務先から巨額の金を横領します。銀行側は、その事実を知ってからも対外的な信用失墜を恐れて不問に付します。
   当の女性行員は、その金で銀座に小さなバーを開きます。オーナー・ママとなった彼女は、ホステスの確保に、ライバル店との苛烈な競争に、パトロンの獲得などに辣腕を振るって、業界ナンバーワンを目指します。その間には、闇社会のボスや政財界の陰のフイクサーとの交渉も有ります。
もとより、小説ですから実録では有りません。しかしながら、「 事実は小説より奇なり 」  とも云われます。この作品はフイクションでも、部分的にはかなり真実に迫るのではないかと感じました。
   ここで独断と偏見で云うならば、勤務先と家庭の間の往復に明け暮れる平均的なサラリーマン氏に、" 
別社会の実態を疑似体験させる "   効用が有ると云えるように思います。

3.  大正期から昭和初期にわたって活躍した  " K. K "  と云う作家がいました。氏は作家と云う職業がビジネスとして成立することを実証した最初の人だと評されたそうです。氏は作家としての地位を確立した上に、文芸を中心とした総合雑誌を創刊して成功したのです。
氏は、機会を捉えては 「 世間に未熟な若年者は、小説を読み世の実態を知って、一時の誘惑に負けて軽率な行動をしないように自戒すべきである。」   と云う意味の発言をしたそうです。氏の作品は男女の交情を描いたたものが多いので、「 マッチ・ポンプ 」  の感を免れませんが、そのような読み方も有り得ます。
換言すれば、" 小説を読み未知の世界の疑似体験を積んでいれば、不良男性の陥穽に陥る危険を回避できる  "   というわけです。

4. 老生は、高度成長・技術革新に関わった人物・組織の物語を好んで読みました。それは、老生自身がその世界の末端に在籍し微力を尽くした経験を持つからです。
1945年の敗戦の結果、日本社会は破産状態でした。国土の大半は焼け野原となり、モロモロの産業は壊滅状態でした。市民の生活は「 住むに家無く、食うに食無し 」 という窮状でした。それでも、人々は総力を結集して努力した結果、10年にして戦前の経済に戻り、20年にして高度成長に成功し、30年で幾多の技術革新を成し遂げ世界の先端に伍しました。
この時期には多くのノンフイクション作家が技術開発の物語を著しました。記憶を辿ると 「 日本の半導体開発 」 「 電子立国日本の自叙伝 」 「 プロジェクトX 」 「 匠の時代 」   などが有りました。これらの記録に登場する人物は、当時の老生にとっては、尊敬に値する先輩、同年配のライバル、頼もしい後輩でした。たとえ専門分野は違っても、開発についての情熱・努力・献身には魅せられました。
これらの作品の登場人物の専門分野と老生の分野とは異なるケースでも、技術開発という大枠では相通じる事も多く、大いに参考になりました。疑似体験というよりも実体験そのものという感覚でした。

                   < 以下次号>

 

 

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